たしかに私は毎日休む間もなく働いているが、
天帝様の娘である織り姫様とは、到底つり合いなどとれてはいない。
天の川の西の岸辺に住むあの美しいお方は、高貴な身分でありながら毎日機を織っていらっしゃる。
織り姫様の織った白い布は雲に、赤い布は宵の空を飾る夕焼けに変わり。
七色の布は、雨の降り止んだ空に煌めきかかる虹になるという。
そんな尊い力を持たれる織り姫様と私が御一緒するなどとは、天帝様もどういうお考えか。私は一介の牛飼いにすぎぬ。
なんという素晴らしいお方だろうか。
私は身分も忘れこの方と共に生きる、悠久の時を。
毎日がこのうえなく楽しい。仕事も手につかない。貴方さえいれば何も欲することもない。
ああしかし牛が泣いている、空には雲もなく、夕焼けもなく、虹も忘れ去られた。
このままではいけない。
そして天罰は下ったのだ。自業自得とはいえ、最高の罰をこの身にうけることになるとは。
織り姫様と離れて、天の川の東の岸に帰る…なんというむごい罰だろう。
もう二度と逢えない。いっそのこと死んでしまおうか、
これからの長い道のりを独りで歩くのは私には無理だろう。
しかしまだ死ぬわけにはいかぬのだ。織り姫様もきっと苦しんでおられる。
あの方が苦しむのを放ってはおけない、どうしてもどうしても
どうしても…どうしても…
もう二度と自分に甘えないよう、生きていこう。
貴方と一緒に居られるのなら。
諦めてはいけない。
貴方だけは、貴方だけは、
不幸になってはいけない。
天帝様は、気をおとし病気になってしまった織り姫様の為に
私たちの決意を信じ、
1年に1度だけ逢うことを許してくださった。
私はこれから毎年、天の川を越えて貴方に逢いに行く。
今宵、七月七日の晩に。
もう二度と自分に甘えないよう、生きていける。
貴方と一緒に居られるのだから。